タイの発電所開発に学ぶ 持続可能な成長と現場主義の力

こんにちは、Yatzです!

最近、アジアの新興国におけるインフラ開発の現場をケースで学ぶ機会がありました。今回は、タイの発電事業者「バンプーパワー(BPP)」の取り組みを通じて、インフラプロジェクトに潜む課題とその乗り越え方、そして企業が社会に対してどう変化していくかを考えてみたいと思います。

(※自分用の備忘録としてまとめておきます)

名古屋商科大学(NUCB)のMBAカリキュラムの企業理念と経営戦略『Corporate Mission and Strategy』 のDAY4で扱ったケース(タイ・バンプーパワー2017)をもとに作成しております。

目次

タイ・バンプーパワー2017の要約

バンプーパワー(Banpu Power:以下BPP)は、タイに本拠を置く電力事業会社で、東南アジアおよび中国を中心に発電所の開発・運営を行っている企業です。親会社であるBanpuは石炭を主軸にしたエネルギー企業で、かつてはタイ電力公社(EGAT)の子会社として設立された歴史を持ちます。

本ケースでは、特にタイ・ラヨーン県に建設された「BLCP石炭火力発電所(Bangpakong Power Plant)」に焦点を当てています。このプロジェクトは、出力1,434MW(717MW×2基)の大規模発電施設で、総投資額は約16億ドル(当時のレートで約1,700億円)にのぼりました。事業主体はBanpuとElectricity Generating Public Company(EGCO)の合弁企業で、約10年にわたる準備期間を経て2006年に稼働を開始しています。

本プロジェクトでは、約40件に及ぶ政府の許認可を取得しなければならず、建設地の環境アセスメント(EIA)住民への説明会(Public Hearing)など、政府機関や地元住民との調整に多大な時間と労力が割かれました。また、資金調達面では、タイ国内の銀行団に加えて国際金融機関からの協調融資を取り付け、リスク分散を図りました。資本コストの最適化と、長期的な返済計画の策定が求められる中、柔軟なファイナンス体制を構築した点も注目すべきポイントです。

BPPはこのような大規模プロジェクトを成功させる一方で、2010年代後半には企業ミッションの見直しにも着手。従来の「安定的な電力供給を通じた経済的成功」から、「持続可能な社会価値の創造」へと舵を切ることになります。これは、再生可能エネルギー(Renewable Energy:RE)比率を2030年までに50%に引き上げるという、同社の中長期戦略の一環でもあります。

加えて、教育支援・医療支援・森林再生活動などのCSRプログラムを通じて地域社会との共生も強化し、単なるインフラ企業から“信頼されるパートナー”への脱皮を目指している姿が印象的でした。

このケースは、単なる発電所開発の成功談ではなく、組織の変革、リーダーシップの実践、そして持続可能性という現代的テーマを内包しており、非常に多くの学びを与えてくれるものでした。

発電所開発の標準プロセスとその課題

長期的な計画と複雑な利害調整

発電所の開発には通常、15年以上の長期スパンがかかる。まずは政府の電力開発計画(PDP)に組み込まれる必要があり、その後、許認可、資金調達、土地取得、建設と段階を踏む。特にタイでは、環境アセスメントや住民説明会など、地域社会との調整が欠かせない。

ゴリ係長

タイムスケジュールを甘く見てたら、エライ目に遭うってことやな

インフラ開発に伴うリスクと時間的制約

プロジェクトには政治的変動、法律改正、住民の反対運動など、外部環境のリスクがつきまとう。BLCPプロジェクトでは、約40の許認可を取得する必要があり、書類の不備1つで大幅に遅延するリスクもあった。

プロジェクト成功の鍵:バンプーパワーの戦略

工期短縮とコスト管理の実現

BPPは、建設段階での遅延やコスト増加を避けるため、詳細なスケジュール管理と工程の可視化を徹底。発電所建設のプロセスをWBS(Work Breakdown Structure)に細分化し、各作業の責任範囲を明確化した。

また、経験豊富なパートナー企業を起用し、プロジェクトマネジメントの精度を高めたことで、予定よりも早く操業を開始できた。

BLCP石炭火力発電所の成功事例に見る要因

BLCPプロジェクトの成功は、単なる技術力や資金力だけではなく、「現場を見に行く」姿勢と「意思決定の迅速さ」が鍵だった。トップマネジメントが現地に足を運び、住民の声に耳を傾け、相互理解を深めたことで、地域の信頼を得られたのだ。

経営トップの行動がもたらした組織の推進力

強いリーダーシップと現場主義

バンプーパワーのCEOは「現場第一」を掲げ、自ら現地に赴いて状況を把握し、関係者と対話を重ねた。この「現場主義」が、組織全体に浸透し、プロジェクトの円滑な推進に大きく貢献した。

ブル取締役

言うは易し、現場に通うのがホンモノのリーダーってやつだな

組織文化と意思決定のスピード

複雑な利害関係の中で素早く意思決定するには、柔軟な組織文化が必要。BPPでは、部署を横断した情報共有と、現場の裁量権を尊重する仕組みが整っていた。これが、急な状況変化にも対応できる組織を形づくった。

社会的責任とビジョンの転換

「経済的成功」から「持続可能な社会貢献」へ

従来、電力事業は「利益重視」が前提だったが、BPPは発電所の安定供給に加えて、地域社会との共生、環境負荷の軽減といった価値を優先するように変わった。

地域住民への生活支援プログラムや、植林活動、教育支援なども展開し、「選ばれる企業」としての地位を確立し始めている。

ミッション変更の背景にある社会的変化

この転換の背景には、タイ国内の環境意識の高まりや、国際社会の持続可能性重視の潮流がある。BPPもまた、そうした変化を受けて「再生可能エネルギーへのシフト」を明確に打ち出した。

さいごに

このケースを通して学んだのは、ぶっちゃけバンプーさんがすごいちゃんとしているということくらいです。

が、あえて絞り出すとしたら、インフラ開発において「計画の綿密さ」や「現場との信頼関係」が極めて重要だということを改めて再認識しました。それだけの仕組みの中で仕事をしている人たちは自然とモラルや工程管理意識が高まっていくのでしょうね。

また、もう一つ大事な点としては、企業が社会的存在として利益と社会価値の両立を目指す時代に入っていることが実感できましたね。
これは、企業統治と企業倫理のケースでも十分認識することが出来ましたが改めて感じました。

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この記事を書いた人

いち40代サラリーマンの「もがき」、ここにあります。
上からは無茶ぶり、下からはZ世代の鋭いツッコミ──そんな板挟みの日々を送る、しがない中間管理職です。
「50代こそ、きっと人生の黄金期になる」と信じて、今日もなんとか踏ん張っています。

これまで、新規事業の立ち上げから、事業計画の策定、M&AやPMIまで、実務を通じて経験してきました(いずれも3〜7年ほど)。

実務の現場で感じたこと、学んだこと、そしてちょっとした愚痴まで、共感いただけるあなたに届けたいと思っています。

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