エスノグラフィーとは?デザイン思考を深める観察のアート

こんにちは、Yatzです!

最近、ビジネスやデザインの現場で「エスノグラフィー」という言葉を耳にすることが増えてきました。元々は文化人類学における調査手法として知られていましたが、今やユーザー中心の製品開発やサービス設計において、非常に有効なアプローチとして注目されています。

この記事では、「エスノグラフィーとは何か?」という基本的な概念から、デザイン思考との関係性、そして現場での活用方法に至るまでを、自分自身の備忘録として整理しておきたいと思います。

名古屋商科大学(NUCB)のMBAカリキュラム『Design Thinking Bootcamp』をもとに作成しております。

目次

エスノグラフィーとは何か:観察から始まる深い洞察

エスノグラフィー(Ethnography)の語源は、ギリシャ語の“ethnos(民族)”と“graphein(記述する)”にあり、もともとは人類学におけるフィールドワーク(現地調査)の手法を指していました。調査者が対象の文化や生活に深く入り込み、行動を共にしながらその背景にある価値観や習慣を観察・記録するというアプローチです。

その代表的な事例が、ブロニスラフ・マリノフスキーによるトロブリアンド諸島での24ヶ月にわたる調査です。彼は「クラ」という首飾りと腕輪の交易を通じて、西洋とは異なる価値観が存在することを明らかにしました。このように、エスノグラフィーは単に行動を記録するだけでなく、その意味や文脈を理解するための方法でもあります。

シバキチ顧問

行動の奥にある“文化的背景”まで掘り下げるのが、観察の妙味じゃのう

デザイン思考との接点:共感フェーズを支える

デザイン思考のプロセスは「共感→定義→発想→試作→テスト」の5つで構成されますが、その中でも最初の「共感(Empathize)」フェーズにおいて、エスノグラフィーは特に重要な役割を担います。

ユーザー自身も気づいていない潜在的なニーズや、無意識の行動に隠された課題を明らかにするには、ただ質問するだけでは不十分です。ユーザーの日常生活に寄り添い、その現場で何が起きているかを丁寧に観察することこそが、本当の意味での「共感」につながります。

ネコマタ商事

え、えっと…ユーザーの気持ちって、見てみないとわかんないんですね…!

調査手法のバリエーション:観察の多層構造

エスノグラフィーは多様な手法を組み合わせて活用されます。以下は代表的なものです:

  • 参与観察:対象者と共に過ごしながら行動や言動を記録
  • ホームビジット:ユーザーの自宅を訪問して日常環境を観察
  • 日記調査:ユーザーに自身の行動や感情を記録してもらう
  • デプスインタビュー:観察だけではわからない深層心理を掘り下げる
  • ビジュアル記録:写真や映像を通じて感覚的な理解を補完

これらの手法は互いに補完関係にあり、ユーザーの「なぜそうしたのか?」という深い理解へと導いてくれます。

ゴリ係長

五感を使って観察だ!空気感まで筋肉で感じるんだ!

気づきの創出:ケチャップボトルの逆さ使いに学ぶ

ハインツのケチャップの例は、エスノグラフィーの有用性を象徴しています。ユーザーがボトルを逆さにして使っていることに着目し、「中身が出にくい」という不満がそこに潜んでいると解釈。逆さに置けるボトルの開発へとつながり、売上も大きく向上しました。

このように、エスノグラフィーは「何が起きているか」だけでなく「なぜそれが起きているのか」を読み解く手法です。行動の裏側にある文脈を理解することで、本質的なニーズに迫ることができます。

シバ部長

観察とは“問い”を持って見ること。そこに深い洞察が生まれるんですね。

マーケティング調査との違い:目的と対象の明確化

マーケティングリサーチが「平均的なユーザーの声を数で把握する」ことに重きを置くのに対し、エスノグラフィーは「極端な行動をするエクストリームユーザー」に注目します。これは、課題やニーズが最も顕著に現れるのが、平均から外れた人々だからです。

また、マーケティング調査が「仮説検証型」であるのに対し、エスノグラフィーは「仮説生成型」と言えます。観察を通じて、これまで想定されていなかった新しい発見が生まれる可能性が高いのです。

比較項目マーケティングリサーチエスノグラフィー
対象者平均的なユーザーエクストリームユーザー(極端な行動をする人)
調査目的顕在ニーズや市場全体の傾向の把握潜在的課題や新たな気づきの発見
調査スタイル仮説検証型(既存仮説を確認)仮説生成型(新たな仮説を導く)
データの性質定量的・広範囲定性的・深掘り型
発見の可能性予測範囲内の発見が中心想定外のイノベーションにつながる発見

さいごに 観察は創造のはじまり

エスノグラフィーは単なる調査手法ではなく、人間の行動とその背景を深く掘り下げることで、新しい価値の創出につながる創造的なアプローチです。

特にデザイン思考においては、ユーザーの声にならない不満や願望を察知し、それを起点に革新的なアイデアを生み出すための“共感装置”とも言えるでしょう。

誰かの“当たり前”に入り込み、それを問い直すことで、本当に必要とされるサービスやプロダクトのヒントが見えてくる──それがエスノグラフィーの持つ力ですね。

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この記事を書いた人

いち40代サラリーマンの「もがき」、ここにあります。
上からは無茶ぶり、下からはZ世代の鋭いツッコミ──そんな板挟みの日々を送る、しがない中間管理職です。
「50代こそ、きっと人生の黄金期になる」と信じて、今日もなんとか踏ん張っています。

これまで、新規事業の立ち上げから、事業計画の策定、M&AやPMIまで、実務を通じて経験してきました(いずれも3〜7年ほど)。

実務の現場で感じたこと、学んだこと、そしてちょっとした愚痴まで、共感いただけるあなたに届けたいと思っています。

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