Day4になると、楽しい授業はさみしく、イライラしている授業はようやく、などいろいろな感情が出てきますが、是非この授業で得たものは何かというのを改めて考えていただくと良いかと思います。
どうしても目の前のケースと授業で自分をアピールすることに集中しているので、この授業で何を学べるんだっけ?実務に活かすためには?という目線で捉えることがおざなりになってしまうので、より体系的に体に染み込ませるためにも講師はどうなって欲しいからこの授業プランにしているのかなという感じで捉えると何か良さそうな気がします。分からんけど。
さて、ケースに入ります。
株式会社グリーンテクノ21 〜オープン戦略で商流を構築する〜
株式会社グリーンテクノ21(GT21)は、佐賀県佐賀市に本社を置く、卵殻のアップサイクルに特化した製品開発企業です。2003年の設立以来、卵殻を活用したグラウンド用白線、チョーク、スポーツ用品、壁紙などを製造・販売しており、年間でなんと6000トン以上の卵殻を再利用しています。「卵殻廃棄ゼロ」を掲げ、持続可能な社会の実現に本気で取り組んでいる好感の持てそうな企業です。

今回はこの会社を例に、環境ビジネスについてディスカッションしました。
きっかけは、GT21が開発した卵殻粉砕処理機。卵割業者にとっては、処理の手間や臭い問題を解決でき、処理費用の削減にもつながるスグレモノです。ただ、既存機械の改良を重ねてようやく形にしたものの、ビジネスとしてはまだまだ前途多難とのこと。
その前に、そもそも「環境ビジネス」って何やねんということで定義を確認。
環境ビジネスとは、
環境問題の解決や自然環境の保全に貢献しながら、利益も追求するビジネスのこと。別名「エコビジネス」「グリーンビジネス」とも呼ばれます。
そうなんだけど、、、何となくこじつければO.K.!?ともやもやしながら、環境ビジネスについては…
- 「環境を守る」一辺倒になりがちで、利益を上げる視点に乏しく継続性に欠ける
- 「顧客は誰?何に困ってる?」というビジネスの基本が曖昧なケースが多い
という印象が強いです。
大手企業がCSRの一環として行っていることも多く、広告宣伝費の範疇に近い。本格的なビジネスとして継続していくには、正直なところ、ハードルが高い領域かもしれません。
グリーンテクノ21がこれまで成功できた要因は?(バリューチェーン分析)

バリューチェーンで見てみると、以下のような点が挙げられます。
- 調達(Inbound Logistics)
→ 大手食品メーカーの工場内に卵殻粉砕処理機を設置し、調達・運搬コストを削減。 - 製造(Operations)
→ 自社開発の粉砕処理機により、乾燥・粉砕工程を一体化し製造コストを圧縮。 - 出荷物流(Outbound Logistics)
→ 卵殻製品をスポーツ店・教育機関に供給。スポーツ店を巻き込んだ営業戦略で販路確保。 - マーケティング・販売(Marketing & Sales)
→ スポーツ店に対して8000件の電話営業という泥臭いアプローチ。 - サービス(Service)
→ 全量買い取り保証や、OEM先への**販促支援(メディア露出など)**で顧客をサポート。 - 技術開発(Technology Development)
→ 卵殻粉砕処理機やエコ基準の策定、特許出願。
さらに、特許をあえてオープンにして原料供給ビジネスに徹するという差別化戦略。
さて、ケースにコストを200円以内にする必要性が記載されているわけですが、調達コスト200円以内に抑えるのがMUSTで、それを実現するためのバリューチェーン構築に成功したということですね。環境ビジネスだけど、実ビジネス同様数字をおってますよ的な。
当たり前だけど自分で実現するのは難しいですから。さすがの会社です。そして、ポイントは自社じゃなく取引
大手工場に処理機を直接設置すれば、自社で大きな処理施設を抱える必要がない。
この発想はなかなか鋭いと思いました。
社長が目指す「IPO(株式公開)」にはどんな課題がある?
ふだんあまりIPOのことなんて考えませんが、
上場には「時価総額10億円以上」が一つの目安になるらしく、今のニッチ市場だけだとスケールに限界があるのは明らかです。
つまり、何らかの事業拡大が必須ということ。
卵殻の新たな活用先が見つかるかがポイントになりそうですが、
たとえば化粧品分野への応用とか可能性はありそうな気がします。
ただ、チョーク原料と聞くと、ちょっと印象は微妙ですけどね…。
とはいえケースにあるのですが、VC(ベンチャーキャピタル)との連携ができているのは強み。
外部の視点からのアドバイスを受けつつ、次の一手を模索していけるのではと思います。この問いはここまでですね。一般論というかそれっぽい回答しか出来ないですからね。
戦略意思決定に必要な分析とは ~M&Aと戦略~
株式会社豊田自動織機(Toyota Industries Corporation)は、1926年に豊田佐吉によって創業された企業で、トヨタグループの“源流”にあたる存在です。
繊維機械の製造からスタートし、現在ではフォークリフト、カーエアコン用コンプレッサー、エアジェット織機などで世界トップシェアを誇ります。本社は愛知県刈谷市でグローバル展開を推進中です。

さて、ケースの前段として主役の豊田自動織機の状況ですが、
日本では、全国40の販売会社・310拠点という強力な専売網を確立。
さらに、自動車販売店ベースのアフターサービスネットワークで対応力が高く、ライフサイクルコスト最小化まで提案できるのが強み。“しっかり積み上げてくる”トヨタブランドもあり、顧客からの信頼感はバツグンです。
北米市場においても日本同様、地道で丁寧な販売店開拓により、販売網を400店にまで拡大。
90年代後半には単一ブランドでトップシェアを獲得するという快挙を達成しています。
一方で欧州では…
欧州はご存じの通りいくつもの国が点在しそれぞれ市場構造が異なるため、北米のように一気に展開できず、車もそうですが、ドイツ勢という強力な競合もあり、販売網の拡大に苦戦していました。
ということで、欧州市場浸透の足がかりとして、2000年6月にフォークリフトおよび倉庫用機器の大手であるスウェーデンのBT Industries ABの買収により、欧州市場浸透を図るというお話です。
では、ケース問いについてですが、
BT社の買収は成功だったのか?
➡ 経営者としては「成功です」としか言いませんが、真面目に言ってもこれはよく買収できたな案件だったと思います。
BT社は、
- 欧州で高いシェアを持ち、販売・サービス網も盤石 → 欧州進出の足がかりとして最適
- リーチ型・オーダーピッカーなど倉庫用機器が充実 → トヨタのカウンター型と補完関係
- 経営も安定 → 統合プロセスも進めやすいし、自走も可能
と三拍子そろった優良案件。
仮に他社に買われていたら、欧州でのプレゼンスを失っていた可能性すらある。
そういう意味でも、“アッパレな買収”だったと言えます。
ということで、BT社で気を良くした豊田自動織機は、次のターゲットをアジア市場へと向けます。
特に中国を中心に急成長中の市場を無視するわけにはいかない。そこで目をつけたのが…
1973年設立の台湾メーカーで、内燃式・電動フォークリフトや倉庫機器を製造販売しているタイトリフト社です。
タイトリフト社は買収対象として適切か?
➡ 適切どころか、“ドンピシャ”です。
アジア圏ではローエンド商品の需要がまず重要。
「とりあえずモノがある」ことが大前提で、そこから段階的にハイエンドやニッチなニーズに移行する流れです。
トヨタ自動織機はハイエンドモデル中心。
だからこそ、ローエンドをカバーできるタイトリフト社は補完関係が強い。
- 中国市場で3位のポジション
- 台湾でも一定のプレゼンス
という実績もあり、ターゲット企業として十分魅力的です。
“ガチガチ運営”のトヨタが選んだのなら、まぁ間違いないでしょう。
買収を中長期で成功させるには?
➡ ここが戦略意思決定の本丸。つまり、PMI(統合プロセス)こそ命です。
もちろんDD(デューデリジェンス)をしっかりやる、現地訪問も重ねる、というのは基本。
ポイントは以下のとおり:
- PMIの体制と計画を最初から明確にしておくこと
- BT社とは違って、旧経営陣に丸投げせず、必要ならスパッと切る
- ローエンド市場の知見を吸収しつつ、カンバン方式やTPSなどトヨタ式の生産管理を導入
- 両社の文化の差異を乗り越えられるかどうかの見極め
「買ったら終わり」ではなく、買ってからが勝負。
M&Aが成功するかどうかは、結局PMI次第なんですよね。
ということで、毎回最後は抽象度の高いお題が入ってきてモヤモヤしたものの、実例をもとに企業戦略を考えられた有意義な講義でした。
これで、Business Analysis編は終了です。
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