デザイン思考②:ユーザー共感から始める実践プロセス

こんにちは、Yatzです!

前回の記事(デザイン思考①)では、「デザイン=見た目」ではなく体験や仕組みまで含めて設計する“広義のデザイン”を軸に、デザイン思考=道具/デザイン経営=仕組みという整理をしました。今回はその続編として、実際に現場でデザイン思考を活用するプロセスに焦点を当てます。NUCBの『Design Thinking Bootcamp』やKees Dorstの議論、そしてd.schoolの5ステップをもとに、実務のヒントをまとめてみました。

名古屋商科大学(NUCB)のMBAカリキュラム『Design Thinking Bootcamp』をもとに作成しております。

目次

共感から始まるデザイン思考:なぜ「人」に寄り添うのか

デザイン思考の起点は「共感(Empathize)」です。ここでいう共感は単にユーザーの声を聞くことではなく、行動・感情・文脈・制約を立体的に理解することを意味します。ユーザー自身も気づいていない潜在的ニーズや、本音を隠す習慣的な行動に注目することで、表層的な不満や要望を超えた“真の課題”にたどり着くことができます。

表層の声と深層ニーズの違い

たとえば「待ち時間が長い」というクレームの背景には、「自分が放置されているようで不安だ」という心理が隠れている場合があります。単に待ち時間を短縮するのではなく、安心感を与える仕組み(進捗表示や能動的な情報提供)を設計することで、本質的な不満解消につながります。このように、表層的な声と深層的なニーズを区別することは、顧客満足を高めるうえで不可欠です。

共感を深めるための具体的手法

共感フェーズでは、観察・インタビュー・エスノグラフィーといった手法が効果的です。たとえばシャドーイングでは、ユーザーの無意識の動きを把握できますし、共感マップを使えば感情や行動の相関が可視化されます。これらを活用することで、本人すら言語化していないニーズや矛盾に近づくことができるのです。

新人ペンタ

えっ、気持ちまで見るって心理戦っすね…!

業務プロセスと顧客体験の重なりを理解する

デザイン思考は、単なる効率化や標準化ではなく、業務プロセスそのものを顧客体験の一部として再設計するという視点を持ちます。つまり、組織内部の効率性に閉じず、顧客がそのプロセスをどう感じるかに軸足を置くことが重要なのです。

BPRとの違いを整理する

従来のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は無駄を省くことを目的としますが、顧客体験が抜け落ちると「速いけど冷たい」対応や「丁寧だけど遅い」対応に陥りがちです。顧客視点を欠いた業務改善は、効率性が上がっても体験価値を下げてしまうリスクがあります。この点で、デザイン思考はBPRを補完し、真の価値をもたらします。

体験レイヤーを重ねたプロセスマップ

プロセスマップにタッチポイント(接点)/感情変化/摩擦点(不満や障害)/期待値を並走させると、業務改善が顧客体験にどう影響するかが見えてきます。例えば顧客が「遅い」と感じる瞬間に実際の感情変化を重ねると、「待ち時間自体」ではなく「不透明さ」が不満の原因だとわかることがあります。こうして意思決定の優先順位を「効率だけ」から「体験価値との両立」へと進化させることができるのです。

実務への応用例

例えばカスタマーサポートでは、応答時間短縮だけをゴールにせず、待ち時間中に進捗を見せる仕組みや、自己解決できる選択肢を提示することで安心感を与えられます。これにより「不満を減らす」だけでなく「信頼感を高める」プロセス設計へと変わります。デザイン思考は、このように業務プロセスと顧客体験を重ね合わせて考える力を与えてくれるのです。

ゴリ係長

筋肉をつけるなら“誰のための筋肉”か考えるっスよ!

発想と実行を行き来する:問い直しと学びのサイクル

デザイン思考の強みは、発想(Ideate)と実行(Prototype/Test)を柔軟に行き来できることです。従来のプロジェクトが直線的に進むのに対し、デザイン思考は反復的で学習志向的なプロセスを重視します。

発想のモードと実行のモード

発想フェーズでは批判を抑え、量と多様性を重視します。逆に実行フェーズでは、試作品を作り「何を学ぶか」を明確にした検証を行います。この切り替えを意識することで、自由な創造性と現実的な実行力を両立させることができます。

問い直しの重要性(経験談)

私の経験でも、「どう効率化するか?」と問うと改善は小手先に留まりました。しかし「なぜこの工程は必要なのか?」と問い直すと、不要な工程を削除でき、根本的な改善に進めました。問いの設計次第で発想の幅も成果の質も大きく変わるのです。

直感と再現性の両立

ひらめきは偶然に見えて、実は観察や問い直しから生まれています。だからこそ、その瞬間を記録し、言語化してチームで共有することが重要です。これにより、直感を再現可能な知識に変え、次のプロジェクトでも同様の学びを活かすことができます。

シバ部長

アイデアは筋トレと同じ。まず数を出して、あとで精度を磨けばいいんですよ。

さいごに

デザイン思考は「知識」として学ぶだけでは不十分で、現場で小さく試し、失敗から学ぶ中でこそ力を発揮します。共感・課題定義・発想・試作・検証のサイクルを繰り返すことで、組織や個人に“学習の筋肉”がついていきます。最初から完璧を目指す必要はありません。「完璧より前進」を合言葉に、一歩を踏み出すことがデザイン思考実践の第一歩です。

ネコマタ商事

なんだか…うちの現場でも試してみたくなりました!

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この記事を書いた人

いち40代サラリーマンの「もがき」、ここにあります。
上からは無茶ぶり、下からはZ世代の鋭いツッコミ──そんな板挟みの日々を送る、しがない中間管理職です。
「50代こそ、きっと人生の黄金期になる」と信じて、今日もなんとか踏ん張っています。

これまで、新規事業の立ち上げから、事業計画の策定、M&AやPMIまで、実務を通じて経験してきました(いずれも3〜7年ほど)。

実務の現場で感じたこと、学んだこと、そしてちょっとした愚痴まで、共感いただけるあなたに届けたいと思っています。

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